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ベートーヴェン捏造

種類 : 邦画
製作年代 : 2020年代
ジャンル : その他

タイトル:ベートーヴェン捏造
製作年・国:2025年Amazon MGMスタジオ、松竹
監督:関和亮
出演:山田裕貴、古田新太、染谷将太
評価:★★☆

かげはら史帆の歴史ノンフィクション『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』(河出文庫刊)の映画化。舞台は19世紀のヨーロッパ。ベートーヴェンの元秘書アントン・フェリックス・シンドラー(山田裕貴)が、自著『ベートーヴェン伝』第1版の刊行後、国家的なお墨付きを得るため、ベルリン王立図書館(現ベルリン国立図書館)を訪れ、音楽部門責任者ジークフリート・ヴィルヘルム・デーン(安井順平)と面会し、ベートーヴェンの「会話帳」(注:聴覚を失ったベートーヴェンが家族や友人、仕事仲間とコミュニケーションを取るために使っていた筆談用ノートのこと)や所持品の買取を依頼する場面がある。また、シンドラーの著書や話の真実性に疑念を抱く米国人アレクサンダー・ウィーロック・セイヤー(染谷将太)の肩書きは、司書・音楽ジャーナリスト。原作によると、彼が米国で『ベートーヴェン伝』第1版の英訳版を初めて手にした時の肩書はハーヴァード大学の法学院生兼図書館助手であったという(本作では「図書館司書見習い」という表現が使われている)。彼が、フランクフルトのシンドラーの自宅を訪れ、自身のことを「アメリカで司書をやっている」と言って、二人が会話する場面のほか、ベルリン王立図書館に通い詰め、苦労して「会話帳」を書き写し、分析を試みる場面、初回の面会から6年後にシンドラーと2度目の対面をし、「会話帳」の処分や改竄を彼に自白させる場面が描かれており、図書館、会話帳、司書が影の主役とも言うべき重要な役割を担っている。終盤、シンドラーの嘘が公的に暴かれたのは1977年のことで、「ドイツ国立図書館版・会話帳チーム」によってであったことも、現代日本の中学校の音楽教師(山田裕貴の一人二役)の口から説明されている。シンドラーが書店の書棚の前でフランツ・ゲルハルト・ヴェーゲラー&フェルディナント・リース共著『ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェンに関する伝記的覚書』の本を手にする場面やシンドラーの後任の秘書カール・ホルツ(神尾楓珠)が、書店の書棚の前でシンドラーの『ベートーヴェン伝』第1版を読み、その内容に驚愕する場面、セイヤーが書棚の前で『ベートーヴェン伝』の第1版と第3版を手にする場面など、背景に本が並ぶ書棚の場面も多数登場する。ベルリン王立図書館はじめ、本作中に登場する多くの場面は、ソニーPCL株式会社のバーチャルプロダクションスタジオの巨大なLEDウォールに投影した3DCD画像を背景に撮影されたという。演じている俳優はすべて日本人であるが、現代日本の音楽教師が放課後、忘れ物を取りに来た生徒に語って聞かせるストーリーが、生徒の脳内で、生徒の知る周囲の教師らによって展開する構成になっているため、違和感はあまりない。ベルリン国立図書館所蔵の「会話帳」の全ページは、現在、同館のデジタルコレクションとして公開されており、誰もがネット上で閲覧することができる。

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