(ほんわかだより. No.130, p.18-24, 1998.4より転載)

図書館映画への招待

お話
和光大学附属梅根記念図書館
市村 省二氏


図書館映画とは

図書館・図書室・図書館員が登場する映画。

市村氏がインターネット上で公開している「図書館映画」リストには300本を下らない映画タイトルが年代順に並んでいる。「おもしろい」と思うと同時に「どうやって調べたんだろう?」という図書館的興味をも引き起こす、この

ホームページをまずご覧いただきたい!
http://www.bekkoame.or.jp/~ichimura/

遊び心と探究心が一体となった、
図書館映画の世界について、
市村氏に話を聞いた。

きっかけ

そもそも、どのようなきっかけで、図書館映画について調べ始めたのですか?
市村 私がこの調査を始めたのは一九九一年ですけれど、それ以前にも図書館映画に関する論文がいくつか書かれていました。たまたま、それを目にして、自分でも調べてみたい、と思ったのです。特に映画が大好きというわけではありませんでした。調べたい、どうやって調べるか、という興味が大きかったのです。
図書館員としての仕事に大きく関わっている…
市村 もちろんですよ。ただ、単に仕事として始めるという感覚ではありませんでした。趣味と実益を兼ねたというか…図書館員からしてみれば、何げなく見ていた映画に図書館や図書館員が登場すれば、まずドキッとする。それからどんな風に描かれているのかついつい
チェックして、見終わったら他の図書館員に報告したりするのも楽しい。これは図書館員に限らず、どんな職業にも共通することでしょうけれど…
それを目録にされる、というのは、やはり図書館の方ならではですね。

情報の収集

市村 さて、情報収集の手段として、既存の資料の他に、データベースを活用したことで、目録の充実度が格段にアップしたと思います。アメリカの映画データベースは非常に充実していて、まず活用したのは'Magill's Survey of Cinema'という、アカデミー賞主催団体の情報をもとにしたもの。各映画に批評文が付いていて、その文中の単語からも検索できるんですね。例えば'library'とか、図書館
に関係しそうな単語で検索して調べていくわけです。ちょうどパソコン通信などを通じて、日本でもオンラインでデータベースを検索できる環境が整い始めた時期でした。その他『ぴあCinema Club』など、作品紹介文から単語検索ができるものについては、それらをフルに活用しました。
 また、他の研究者との情報交換も有力な方法です。雑誌の論文を見てくれた方が、こんな情報がある、ということで連絡をしてくれる。「実は、私も同じことを調べている」という方と、成果の発表のために共同で作業したこともありました。
 また、海外でも同様の研究をしている人は少なくないようです。彼らの資料を参考にしたり、こちらの情報も教えてあげて喜ばれたこともあります。
 こういった海外の情報検索、やりとりをするためにも、やはりネットワーク環境が大きな力を発揮します。一九九四年に、インターネット上でも目録を公開しました。その後、さらにメールによる情報交換の場を作ったことで、情報源が大きく広がり、情報も増えました。

メーリングリスト

市村 ホームページを見ていただければ分かりますが、メーリングリストを利用して、図書館映画の情報を交換しています。現在登録されているのは三〇人ぐらいでしょうか。
 著作権の問題等もあって、映像自体を情報として載せるということは出来ていません。その代わりに、メーリングリスト登録者から参加を募り、「オフ会」と称して図書館映画の鑑賞会を開いたりもしています。
ただ、やみくもに映画を見る、というわけではないんですね。
市村  はい。でも、偶然出会うこともある。レンタルビデオ屋でも、なんとなく図書館が登場しそうなビデオを借りてみて、結局登場しないのでがっかりするとか…

図書館映画から見えてくるもの

「図書館映画だ」と判明したものについては、やはりご自分でもご覧になるわけですね。
市村 ええ。主にビデオで見るのですが、正直な話、なかなかしんどい作業ですね。映画として全くつまらない作品も少なくないですから…。ただ、ほんの一瞬でも(実際、ほんの少ししか出てこないものがほとんどですが)、図書館が出てくる場面は、やはり興味深く見てしまいます。
 映画の中で、図書館・図書館員が、どのようなイメージで写されているか、とらえられているかを見ることは、その社会的イメージを探る材料になりますよね。例えば日本の場合、昔はどちらかというと、暗く寂しい存在として描かれたものが多かった。でも、最近はそうしたイメージの作品は少なくなってきたのではないでしょうか。テレビドラマも含めて、図書館員が登場する回数も多くなってきたよ
うに思います。
 また、外国映画を見れば、各国の図書館事情をかいま見ることができる。これも図書館の様子を見るだけでなく、その国において、図書館・図書館員がどのようなイメージでとらえられているかを知る材料になります。
 実際に見た図書館映画については、目録に、図書館・図書館員が登場する場面についてコメントを付しておきます。そうすることで、さらに分類する時の参考になりますから。例えばこの『書誌調査1991』では、図書館の館種別(公共図書館、大学図書館等々)にリスト化しています。その他、いろいろな分類方法が考えられるでしょうね。

今後はどのように展開されるおつもりですか?
市村 こういう目録を作り始めてしまうと、どこでけじめをつけるか、ということも大きな問題になってきますね。この目録作りを専門にしているわけではないですし、最近は仕事が忙しくて、ホームページの更新もおろそかになっています…。ただ、せっかくここまで集めていますから、メーリングリスト等を活かしてなんらかの形で続けていこうと思います。
ネットワーク環境の普及に加え、ビデオの普及も重なった一九九〇年代という年代に、このような試みをされたことは、実にタイムリーだったのではないでしょうか。そういう意味でも、ぜひ続けていただければと思います。


興味のある人は…こちらもぜひご覧ください

『パーティーガール』『太陽雨』『Love Letter』『耳をすませば』など最近話題になった図書館映画については『図書館雑誌』(1997.1月号、1998.2月号)で、東 史氏が丁寧に紹介していらっしゃいます。(イラストがとてもかわいい)


図書館映画リスト/図書館映画分析

http://www.lib.hit-u.ac.jp/iijima/

図書館映画のホームページをもう一つ…「図書館映画リスト」では、市村氏作成の年代順リストを元に、タイトルの50音順に図書館映画を紹介。また「図書館映画分析」では、映画の図書館登場シーンを状況別にリスト化しています。各作品の図書館登場シーンについてコメントが付されているので、読んでも楽しめます。

こんなふうに図書館登場シーンが分類されています(「図書館映画分析」より)
・各国各種の図書館が登場する
・利用者との会話または貸出記録
・緑のライトが登場する映画
・特定主題の資料請求や閲覧
・個人の書斎あるいは書店のカタロガー
・主役あるいは準主役が図書館員
・新聞を閲覧したり記事をさがしたりする
・大声・騒音のために注意される


(作成:一橋大学附属図書館 飯島朋子氏)


 お話の後、市村氏が「おもしろいビデオがあるので、ご覧になりますか」とおっしゃるので、見せていただきました。
 それは、さしずめ図書館映画版「ニューシネマパラダイス」(失礼!)とでもいうべきもので、八〇本以上の映画の、図書館登場シーンを二〇分程にまとめたものでした。(念のため付け加えておけば、個人の鑑賞用に、テレビ放映等から録画されたものを編集したものです)
 話を聞いた後に、実際に見てみると、やはり迫力が違います。めくるめくように次々に登場する図書館映画を見ながら、映像資料の魅力・説得力を実感し、しばし呆然としてしまいました。
 ビデオを一緒に見ながら、市村氏が付け加えてくれたコメントと共に、図書館映画の一部をご紹介します。(「」内が市村氏のコメントです)

ティファニーで朝食を』(1961 米)
図書館で、オードリー・ヘップバーンが、『ティファニーの方がずっといいわ』と捨てゼリフを吐く。
「ニューヨーク・パブリック・ライブラリーはよく映画に出てきます」

大統領の陰謀』(1976 米)
図書館で個人閲覧記録を借りだして、疑惑を解明しようとする新聞記者2人。
「議会図書館での有名なショットです。また、図書館の自由との関連で問題にされてもいいシーンです」
天井位置からの俯瞰ショットで、新聞記者は豆つぶほどの大きさに…

ソフィーの選択』(1982 米)
利用者(メリル・ストリープ)が“アメリカの詩人、エミール・ディケンズの本を借りたい”と言うのに、図書館員は、“そんな詩人はいない”と冷たく言い放つ。
「冷徹な図書館員のイメージ…高圧的な身振りを、黒ふち眼鏡が助長している」
ショックのあまり、倒れてしまうメリル・ストリープ。

タイムマシン』(1959 米)
80万年後の世界…廃虚となった図書館の書棚から本を取り出すと、ぼろぼろに崩れ落ちる。

疑惑の影』(1943 米)
過去の殺人事件について調べにきた少女に図書館員が“もう9時なので閉館です”と言う…
「1940年代のアメリカの地方の図書館。9時まで開館していることに驚きます」

エッチの国のアリス』(1976 米)
美少女が図書館のカウンターに乗り、ハリウッドミュージカル調のナンバーを歌う。
「『不思議の国の〜』のパロディー ですね。この主人公の女の子が図書館員なのです」

インフェルノ』(1980 米)
迷いこんできた少女に“ここは図書館ですよ”と囁く老司書。
「ダリオ・アルジェントの映画には、図書館がよく出てきます」
ゴシック調の、いかにも恐ろしげな暗い図書館のイメージ…

ラオ博士の7つの顔』(1964 米)
“いい本は?”と大声で司書に尋ねると、“礼儀作法の本ならあそこに”と、たしなめられる

ハメット』(1982 米)
なぜか床がガラス張りになった図書館に響く靴音。ガラス越しに上階の様子をうかがうハメット。

惑星ソラリス』(1972 ソ連)
主人公が死んだ妻のイメージと戯れながら、部屋の中を浮遊している。
「これも有名なシーンですが、宇宙ステーションの図書室なんですよね」
バッハのコラール。二人の周りで、何冊もの本が宙に浮かび流れていく…

華氏451』(1966 英=仏)
「この映画では、本を禁じられた未来世界が描かれています」
秘密図書館に踏み込むファイヤーマン(焚書隊員)。年老いた女司書は本に火をつけ、自らも炎の中に燃えていく…。

素晴しき哉、人生!』(1946 米)
人生に絶望し自殺を考えたジェームズ・スチュアートに、天使が“もし君がいなかったら、どんな世界になっているか”を見せていく…
「これは、実に衝撃的なシーンです」
スチュアートの愛妻が暗い表情・地味な服装で図書館から出てくる。スチュアートの存在しない世界では、彼女は図書館司書だったのだ。名前を呼ばれても怯えて、逃げ去っていく妻…

図書館』(『ミスター・ビーンの大冒険』より)
今、話題の“ミスター・ビーン”の図書館コメディ(コント)。8分の短編ですが、どんな風に図書館が登場するのでしょう…
★閲覧用の貴重本を下敷きにして絵を描こうとするビーン→くしゃみで絵の紙が飛ぶ→気付かずに本に絵を描いてしまう→気付いたビーンは慌てて修正液等で消そうとするがますます汚れる→今度はわざとくしゃみをして、その音に紛れて汚れたページを破りとる…
ビーンの滅茶苦茶な行動は、さらに続き……ブックマークを使ったオチが絶妙です。


図書館映画について、
なにか情報がありましたら
〒195-8585 町田市金井町2160 
和光大学附属梅根記念図書館 市村省二
E-mail: owner-libcinema@iijnet.or.jp
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